2015年12月18日金曜日

夫婦(選択的)別姓問題 …そこで「くじ引き」ですよ。

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夫婦同姓規定に関する最高裁判決が出て、「とりあえず同姓にすることを強制する法律は違憲とまでは言いがたい」という結論のようです。
 その余波で、以前の Tweet

が沢山 Retweet されています。


 もちろんこれは、男性側も「意図に反した改姓を迫られるかもしれない当事者としての危機感を持つべきだ」という趣旨の冗談な訳ですが、冗談と決めつける前に今回の最高裁判決(PDF)を読んでみるとします。
 すると、次のようなことを述べています。


まず、

・「氏の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一内容であるとはいえない。
・氏を含めた婚姻及び家族に関する法制度の在り方を検討するに 当たって考慮すべき人格的利益であるとはいえる

と述べているので、つまるところ「自分の姓に対する愛着」は利益の問題ではあっても人権問題とまではいえないので、強制的に変更を迫られることが違憲とまではいえない、ということですね。
 また、

・その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく, 本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけで はない。我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫 の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。

・もっとも,氏の選択に関し,これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数 を占めている状況にあることに鑑みると,この現状が,夫婦となろうとする者双方 の真に自由な選択の結果によるものかについて留意が求められるところであり,仮 に,社会に存する差別的な意識や慣習による影響があるのであれば,その影響を排 除して夫婦間に実質的な平等が保たれるように図ることは,憲法14条1項の趣旨 に沿うものであるといえる。

これも憲法問題になるような男女差別とまでは言いがたいものの、実質的に改姓を迫られるのが女性であるという不均衡は無視しがたい、と述べている訳ですね。


 …と、いうことは、

・意志に反する強制的な改姓を迫られることは許容範囲

・男女格差は是正の要あり

ってことで、「強制くじ引き方式」は最高裁の意図にも沿う方式として、是非ご検討いただきたい(笑)


 …まぁ、夫婦別姓に関する最高裁判決は、常識的に読めば「違憲とまでは言いがたいものの、時代に合わせた法律改正を国会で早急に検討すべし」という勧告に読める訳ですが、安部政権を含めた「保守」勢力はそうは読まないのでしょうね。
 一方で、女性の再婚禁止規定に関しては、一応違憲判決が出ていますが,100日に短縮を命じたのみであり、男女の扱いが法律上違うことに関しては容認している訳で、どちらかといえばこちらのほうが保守的な判決に見えます。

…ところで、所謂「保守」の人の家族観の平板さというのは気になります。
 世界を見れば家族の形態というのは多様であり、「核家族」なんてのは近代資本主義上の特殊事情にすぎない訳ですし、日本でも「妻問婚」のような形は歴史的に見られた訳で…(あんたたちは百人一首も読まんのか、という…)。