2016年12月1日木曜日

NHK報道 「 原発事故と向き合う高校生 」への疑問: あるいはリスク・コミュニケーション教育はどうあるべきか、について

このエントリーをはてなブックマークに追加


 NHKのおはよう日本という番組で「原発事故と向き合う高校生」という特集があったようである。福島高校スーパーサイエンス部の生徒たちが福島第一原発の様子を見学したりする様子が扱われた。これは、NHKのページで確認することができ、また YouTubeにも映像が上がっている(後者に関しては、おそらく著作権法上の問題があるものだと思われる)。
 見ると、様々な疑問が湧いてくる報道である。
 特にその中で地元の幼稚園の保護者に、高校生が遠足のリスクについて説明するシーンが出てくるが、この部分には報道だけでは十分に判断できないが、大きな問題があったように見える。

 これは、この会合が、
・なにを目的にしたものであったろうか?(つまり、会合の目的はインフォームド・コンセントなのか、パブリック・アクセプタンスなのか?)
・その目的は、参加者に十分に周知され、またその意味するところについて(それに必要な準備について)、高校生は十分に指導を受けていたのだろうか?
・これを報道する意味は(特に、高校生と保護者の間の感情の対立を報道する意味は)十分に検討され、それは報道される側の理解を得ていたのだろうか?
 といったことが、十分に説明されていない点からくる疑問である。

 以下に、そのことについて論じるが、まず当該のやり取りをNHKのサイトから引用すると、次のようなものであった(可能であれば映像を確かめてほしい)。

 

2016年11月23日水曜日

アメリカ大統領選挙の「憎悪のトリクル・ダウン」

このエントリーをはてなブックマークに追加
Love Trumps Hate in the SF Mission14 (31072227785).jpg


トリックル・ダウンというのは「富裕層が経済的に成功すると、その果実が貧困層にも波及し、結果的には社会全体が豊かになる」という論理である。オバマ政権はリーマン・ショック後、アメリカの経済を立て直すことには成功したが、その果実は貧困層には波及しなかった、と非難されることがあり、これが今回、貧困層(特に「ラスト・ベルト」などと呼ばれる、工業化された五大湖周辺州で長く重工業などに従事してきて、伝統的には組合の支持する民主党を支持してきた労働者階層)の一部がトランプに賭けたことが、ヒラリー・クリントンの敗北を招いたと言われている。しかし、トランプが「トリックル・ダウン」させるのは経済的果実ではなく、憎悪である、という議論がある。同じ共和党の重鎮で、2012年には共和党の大統領候補でもあったミット・ロムニーも「憎悪のトリクルダウン」という言葉でトランプを批判している(ただし、選挙終了後ロムニーとトランプは急接近し、国務長官を務めることも噂されている。元々ロムニーはマサチューセッツ州知事時代は中道よりの共和党員として知られ、中絶の権利などにも寛容であったが、大統領選に出馬後は宗教保守派の支持を取り付けるために主張を右傾化したことでも知られ、「定見のない政治家」という評判がある)。

2016年10月6日木曜日

ゲノム編集技術の研究開発・規制に関する質問主意書

このエントリーをはてなブックマークに追加
NHGRI-97218.jpg 川田龍平参議院議員と話し合って論点をまとめまして、「ゲノム編集技術の研究開発・規制に関する質問主意書」を出してもらいました。言い回しなどは若干、変更されていますが、だいたい論点は採用してもらっているように思います。
 …あと、蛇足ですが一応言っておくと、問8は私の手を完全に離れたあとにつけ加わったもの(経緯は知らない)のですが、趣旨はいいとして言い回しがちょっと物議を醸しそうではあります。
 来週には答弁が出るかと思います。

2016年9月16日金曜日

小笠原自然文化研究所 i-Bo

このエントリーをはてなブックマークに追加


小笠原自然文化研究所が発行する雑誌 i-Bo をご送付いただきました。
しばらく発行がとまっており、ひさびさの発行とのことです。
調査のために、小笠原に滞在していた頃のことを思い出します。

こういった、地域に密着して科学的な研究と活動を行うNPOが一つでも多く、長く活動を続けていってほしいと思っています。
入会の案内などは研究所のウェブサイトから確認できますので、小笠原諸島の自然と文化に関心のある方はぜひ。


2016年9月8日木曜日

二重国籍によって日本国籍も公民権も失われない: 蓮舫氏をめぐる議論について

このエントリーをはてなブックマークに追加

蓮舫氏が台湾(中華民国)との二重国籍なのではないか、という問題が話題を集めている。
 この問題に関連して、菅義偉官房長官は「一般論として申し上げれば、外国の国籍と日本の国籍を有する人は、22歳に達するまでにどちらかの国籍を選択する必要があり、選択しない場合は日本の国籍を失うことがあることは承知している」と述べたとの報道もあり、問題は蓮舫氏の議員資格といった枠に収まらない部分に展開している。
 しかし、この菅氏の認識は(排外主義的な現政権の立ち位置をよく表していると思うが)、立法意図に立ち返れば誤認であるし、その誤認が現在二重国籍である、ないし二重国籍の可能性がある人々に少なからぬ恐怖感を与えるであろうことを考えれば、看過できない。

2016年9月7日水曜日

Google は言語ゲームを遊ぶ: 後期ヴィトゲンシュタインはいかに「役に立つ」か?

このエントリーをはてなブックマークに追加


最近「役に立つ人文学」というのが論争になっている。これについては、「人文学への「社会的要請」とはどんなものでありうるか?」という投稿で、「経済的貢献」「真善美や人間性の追求」および「カンターサイエンス、あるいは再帰的研究」の三つの可能性を示した。しかし、現実的には人文学的研究がこのどれに役に立つかというのはややこしい問題であり、研究が行われた段階でそれを決定することは難しい。これは自然科学であっても同じことなわけだが、人文学的にもそういうことが言える。事例としてコンピューターの歴史の根幹に関わる数々のノンフィクションを発表してきたジャーナリスト、スティーブン・レヴィの『グーグル ネット覇者の真実』から面白い事例を紹介しよう。

アミット・シンガルはインドのウッタル・プラデーシュ州出身で、コーネル大学で学位取得後、AT&Tベル研からGoogle に移った検索アルゴリズムの研究者であるが、彼は Google 検索の精度をあげるというプロジェクトに取り組んでいた。ここで問題になるのは、 Google のアルゴリズムはデジタルなもので、通常極めて論理学的な推論方法にしたがって動くのに対して、検索をかけてくるユーザーは、人間らしい「うろ覚え」や「連想」を駆使して自分の求める情報を探そうとする、ということである。このため、人間から見れば(レヴィの上げている事例を使えば)"Gandhi Bio"と入力されれば Bio は Biography (伝記)を指し、"Bio Warfare" と入力されればそれが Biological のことだというのは自明であるが、コンピューターはこういった「文脈から類推する」ことが通常、苦手である、ということになる。レヴィによれば、シンガルはヴィトゲンシュタインの哲学を応用してこの問題を解決した。当該部分を抜き出してみよう。


 グーグルの同義語システムは、犬と子犬はよく似た言葉で、水を沸かすと熱湯になることを理解するようになったが、「ホットドッグ」と「煮える子犬」が同じ意味であると解釈していた。
 この問題は、2002年後半にある画期的な方法によって解決されたとシンガルは語っている。哲学者のウィトゲンシュタインが、言葉は文脈によってどう定義されるかについて論じた理論を応用したのだ。ウェブから何十億もの文書やウェブページを集めて保存する際に、どの言葉同士の意味が近いかを分析。すると「ホットドッグ」は「パン」や「マスタード」や「野球場」といった言葉と同じ検索結果に含まれており、「体毛が焦げた子犬」とはそういう関係にないことがわかった。最終的にグーグルの知識ベースは、ホットドッグを含む数百万語の検索語をどう処理すればいいかを理解した。

2016年9月4日日曜日

「菅直人を逮捕せよ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
東日本大震災当時、どのような状況だったか、当時内閣総理大臣補佐官として菅直人首相らとともに対策にあたった寺田学衆議院議員が、手記を公開している。
5年前の記憶の全て : 寺田学のオフィシャルウェブサイト
これまで断片的に出ていた情報と大きな齟齬もないし、びっくりするような新事実もないと思うが、当事者から見た「現実」が時系列で繋がって、ここまでの情報量で提示されたのはありがたい。『シン・ゴジラ』がきっかけのようであるが、それだけでも「作品の力」というのを実感できるのではないか。