2018年2月4日日曜日

囚人のディレンマと核抑止(核の傘)概念とは何か、あるいは「限定利用」が何故危険か

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 核の傘、あるいは「核抑止」(Nuclear Deterrence)という概念は、フォン・ノイマンらが提唱したゲーム理論に基づいてる。
 あるいは、少なくとも当初は基づいていた。
 フォン・ノイマンの議論は、多くの物理学者(しばしば、ナチスの迫害を逃れて新大陸に渡った人々であった)が、自分たちが恐ろしい破壊兵器の開発に携わる動機になった(か、少なくともそれを正当化したり、納得させたりする材料にはなった)。
これを理解するには、なぜ戦争が起こるかについて、まず「囚人のディレンマ」モデルで考える必要がある。


 囚人のジレンマとは簡単に説明すれば次のようなものである。
 ケチな泥棒で捕まった二人組の犯罪者がいる。彼らにはその窃盗で2年の刑が言い渡されており、これから刑務所に入るところである。
 ところが、警察は彼らがより重大な強盗殺人事件の犯人ではないかと疑っており、司法取引を持ちかけた。
 強盗殺人について、二人組のもう一方が主犯であると自白すれば情状酌量の余地があるとして、仮放免を与えよう、というのである。
 しかし、その場合は相棒が8年の刑を受けてしまう。
 また、双方が相手の果たした役割について同時に自白してしまえば、仮放免はなくなり、双方に責任ありとして5年程度の実刑が見込まれる。



2017年11月4日土曜日

We-Fiファンド(イヴァンカ基金)への日本政府の出資は是か非か!?

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1.
 イヴァンカ・トランプ米大統領補佐官の来日に伴って世界銀行の「女性起業家支援イニシアティヴ」(通称 We-Fiファンド)に対して、日本が5千万ドル(約57億円)の支出を表明したことが議論を呼んでいる。
 例えば共同通信は以下のようなニュースを配信している
あいさつでは、トランプ米大統領の長女イバンカ大統領補佐官が設立に関わった、女性起業家を支援する基金への5千万ドル(約57億円)拠出を表明した。

こういった報道の仕方が、あたかもイヴァンカ・トランプが私的に設立したファンドに日本の公的資金を入れる、というふうに取られたからである。
 実際は、このファンドは先に述べた We-Fiファンドのことであり、もちろん運営は世銀が(その環境や倫理基準に従って)行い、イヴァンカが自由にできる資金というわけではない。


とはいえ、一方でこの資金には設立の段階から様々な問題点が指摘されており、海外の報道では議論になっていた。
 こういったことが問題として認識されず、騒ぎになって初めてその存在が認識される、というのも問題である。
 わたしが子どもの頃は「海外のニュースの報道がない」といえばアメリカ合衆国のことであったと思うが、情勢はすっかり逆転している印象がある。

2017年9月14日木曜日

科研費特設審査領域「高度科学技術社会の新局面」

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今年度の科研費の公募を見ると、特設審査領域として「高度科学技術社会の新局面」という枠組みが提示されている。


 説明によれば以下のようなことらしい。

2017年6月27日火曜日

「左翼によるグローバリゼーション批判は消え去ってはいない」(ATTAC フランスのドミニク・プリオンへのインタビュー)

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 「その反緊縮とあの反緊縮は一緒ですか!?」という記事に多少関連して、1990年代後半から盛り上がった左派の反グローバリーゼション、反ネオリベラリズム運動について、それが右派に簒奪されたように見えている現状について、ATTAC フランスで長らく活動を続けている経済学者のドミニク・プリオンへのインタビューを訳出してみた。
 原文は”»Left-wing critiques of globalization have not disappeared« An interview with Dominique Plihon (Attac France) | The Great Regression”。

2017年6月22日木曜日

その反緊縮とあの反緊縮は一緒ですか!?

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 最近「日本の左派は反緊縮を唱えないからダメだ」という議論をよく聞く(例えば「なぜ日本の左派で反緊縮が主流になっていないのか? - Togetterまとめ」)。曰く、「欧米では反緊縮は左派の政策」であるらしい。これは果たして事実であろうか?
 率直にいうと、わが国で「反緊縮」を唱える人々のいう「反緊縮」(以下、反緊縮(日)とでも呼称しよう)と、「欧米では」と言われる時の欧米左派のいう「反緊縮」(同様に反緊縮(欧)と呼称しよう)は、もちろんかぶる部分はあるが、本質的には別物である。

2017年6月2日金曜日

「トランプ政権下アメリカの科学・技術と科学者: 全米科学振興協会(AAAS)年次総会での議論を中心に」『科学』2017年5月号掲載

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 ドナルド・トランプ大統領がアメリカのパリ協定離脱を表明しました。
 それに合わせて、というわけでもないのですが、ちょうど掲載誌発売からひと月経ちましたので、岩波『科学』2017年5月号に掲載されました「トランプ政権下アメリカの科学・技術と科学者: 全米科学振興協会(AAAS)年次総会での議論を中心に(PDF)」を公開します(岩波書店より頒布許諾済み)。
 (※他にも政治と科学に関する重要な論文が掲載されておりましたので、もし興味を持っていただいた方は、雑誌の方もご購入いただければ幸いです)


2017年5月29日月曜日

国連事務総長と安倍首相の会談に関する「誤報」について

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 産経新聞が、イタリアにおけるG7サミットに関して"国連事務総長が慰安婦の日韓合意に「賛意」「歓迎」 テロ等準備罪法案批判「国連の総意ではない」”という記事を配信している。
 要するに、韓国との「慰安婦問題」合意や共謀罪に対して国連において人権上の懸念が議論されていることに対して、それらの疑念を呈している機関が例外的な対応をしているだけだと主張したいらしい。


 それに対して、国連事務総長のサイトに「記者へのノート: 事務総長と日本の安部首相とのミーティングに関する質問への応答として」という記事が上がっている。
 この日本での報道が事務総長の意図を(読解力不足ゆえか、意図的かはともかく)捻じ曲げているということに懸念を表明しているものと言える。
 たいして長くもないので、以下に全文を翻訳しておく(国際政治上の定訳とかに詳しいわけではないので、間違いがあればご指摘いただきたい)。

記者へのノート: 事務総長と日本の安倍首相とのミーティングに関する質問への応答として

事務総長と日本の安倍首相とのミーティングに関する質問への応答として、報道官は以下のように述べた。


 シチリアでの会見において、事務総長と安部首相は所謂「慰安婦」の問題について議論した。事務総長はこの問題が日本と大韓民国の間の協定(an agreement)で解決される問題であるということに合意した。事務総長はいかなる特定の協定の内容についても彼自身の判断を下したものではなく、問題の本質と解決の内容を決定するのは二国間に任されているという原則を述べたものである。


 特別調査者に関して事務総長は首相に、特別調査者は独立した専門家であり、人権理事会に直接報告する、と述べた。


  こんなニュースは海外のメディアは追わないだろうし、産経新聞としては言ったもん勝ちだと判断したのかもしれない。
 典型的な「ポスト真実」手法というべきであろう。
 もちろん、こう言った形で日本のメディアしか見ていない人々をグローバルな文脈から切り離し、「わが国が正しい」という情報だけを与えるというのは、いかなる意味でも好ましくない。