昨日(2018年4月14日)、「市民と立憲民主党との大対話集会 関西: 市民の政治のつくりかた」が開催されました。今回は、参加型のイベントにすべく、「立憲民主党に投資」という形で行いました。
以下に、その流れをご報告します。
1. 当日の手順
当日は、参加者に500リッケンという模擬通貨をお渡しし、6人の登壇者(国会議員)から提示される脱原発、経済などの政策に対して、それぞれのコミットメントを示すという意味で自由に「投資」していただくというものです。
当日は、関西から選出されている立憲民主党の皆様に、図表の通りのテーマでお話ししていただきました。残念ながら辻元議員だけは当日他の予定とのバッティングということで、ビデオ・メッセージをいただきましたが、後の方々には最初から最後までお付き合いいただきました。
一人7分程度でそれぞれの政策についてお話しいただいた後、休憩時間を兼ねて参加者の皆様には手元の「500リッケン」を「投資」していただきます。実際は、3枚の100リッケン札と4枚の50リッケン札を受付の際にお渡ししているので、それを各政策の箱に自由に割り振ります。議員が表明しなかった政策に入れたいという場合は、それをリッケンの裏に書き込んでもらって、「その他」のボックスに投票するようにしてもらっています。
下の図は、当日参加者の皆様にお配りしたもので、議員のお話を聞きながらどの政策に何リッケン投資するか、書き込めるようになっています。実際の投票は模擬紙幣で行われますので、このシートはお持ち帰りいただくレジュメも兼ねています。
500リッケンが何を示すかは参加者の皆様それぞれの解釈でいいのですが、例えば10リッケンで1万円の寄付とか、あるいは一日のヴォランティア仕事、という具合にイメージしてもらいます。1日のヴォランティアであれば、50リッケンを全て突っ込むと、一年は大体52週間ですから、週1日ヴォランティアするというイメージです。ここで重要なのは、何となく「国会議員がやってくれるといいなぁ」ではなくて、自分が共感し、その実現のためなら自分が実際に汗をかいたり、晩酌を我慢して寄付をしたり、というアクションを起こしうるか、ということを考えながら投票してほしい、ということです。
2. 「投資」結果
その後、あらかじめお願いしておいた市民代表の方々数人にコメントを頂き、またその間にリッケンを集計します。結果は以下の通りになりました(再集計した結果ですので、当日のものとは若干違っていますが、順位等に変動はありません)。
最終的に投資に参加していただけたのは167人。200人ほどにリッケンをお渡ししているので、8割以上の方に参加していただけた、ということになります。
また、一人当たりの何リッケン投資したかの平均値は約473リッケン。平均して30リッケン弱、お手元に残されたようです。ただし、3/4以上の方は500リッケンを全て消費しています。
複数の政策にバランスよく投資した方が多いため、大きな差はついていませんが、やはり憲法や人権問題への関心が高いのがわかります。特に、それでも他の政策は投資していない人が最大多数(最頻値が0)なのに対して、憲法に関しては100リッケン投資した人が最大多数(最頻値が100)になっており、関心の高さをうかがわせます。
また、人権に関しては500リッケン全てを投資した人が4人おられるなど、これを中心に考えておられる人が多いのが特徴です。
一方、経済に関しては全体に低調で、0リッケンの人が74人おられるなど、獲得リッケンが低いことの他にも関心の低さを伺わせます。これは、立憲民主党の経済政策に魅力が乏しいのか、あるいはそもそもこういった集会に出てきてまで政治参加したいという動機は、経済以外のところからもたらされるという事なのか、もう少し議論してみたいところです。
「その他」には
・朝鮮学校の無償化
・安い公営住宅の充実
・人口減少対策
・沖縄、辺野古基地への取り組み
・移民の受け入れ促進
・電子政府の実現
・障害者政策
・ベーシックインカム
・死刑廃止
・反緊縮
など様々なものが並びました。
また、京都市長選での与野党相乗りへの批判など、政党戦略に関する指摘も多くいただきました。
3. 議論
最後に、結果を見ながら、会場の皆さんになぜそこに投資したか、と言ったことを伺い、議員の方々に応答していただきました。時間的な制約もあり、十分な議論になったかは疑問な点もありますが、多くの方に活発にご発言いただけたと思います。
次は、もう少し時間をとって議論を煮詰めるようなワークショップを企画できればと思います。また、政策を絞って、様々な政党の方に参加してもらって、どの政党の政策が魅力的か議論してもらう、と言ったことも考えられると思います。
また当日は色々不手際もありました(例えば、私のミスなのですが、古いバージョンの計画シートを投影してしまった、など)が、議員の方々および参加者の皆様には快く企画にご協力いただけたと思います。ここで改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。
4. 主旨
こう言った手法は「参加型民主制」や「熟議型民主制」と呼ばれます。
以下は、企画書で説明した、この手法でイベントを行うことの意義です。
「お任せ⺠主主義」にしないためには、市⺠⼀⼈⼀⼈が政党や政治家を応援していく必要があります。
もちろん「応援」といっても、どんな妄⾔を吐こうがお世話になった先⽣やその息⼦さんだから盛り⽴てていこう、みたいな話では、⺠主的とは⾔えません。それよりも、様々な政策課題について、⾃分で考え、他の⼈と議論をし、そうして求められる政策を議員にどんどん提⾔していく、という緊張感のある態度が必要です。そして、⼀度議論に参加したからには、譲れないところはきちんと主張するとしても、ある程度話がまとまったら、多少の不満は残っても、政党と議員を盛り⽴てていくことも必要でしょう。
そういったことを考えると、お任せではない、参加型の⺠主制のためには、⼿間かお⾦、あるいはその両⽅を出すことが必要です。今回の「⽴憲⺠主党に投資」ゲームは、⾃分が年間どの程度、そういったものを「政治をよくする」ために、あるいは脱原発や平和、経済や格差といった問題について割くことができるか、考えてみるためのものです。
こういった⼿法は、誰でも参加できるため「参加型⺠主制」といったり、みんながじっくりと考えることを奨励しているために「熟議型⺠主制」といったりしています。例えば、ブラジルのポルト・アレグレでは議会ではなく住⺠誰もに開かれた直接⺠主制の集会で予算の「優先順位」を決める「参加型予算」という⼿法が開始されました。これは、その後、パリやシカゴなど世界各地で⾏われています。⼀般的には、議会型で決めると道路などへの予算が優先されるのに対して、「参加型予算」だと病院や学校などが優先される傾向にある、と⾔われています。
原発に関しては、⽇本でも⺠主党時代にアメリカの研究者らが提案している「討論型世論調査」を利⽤して、賛否を問うイベントが開催されています。ただ、これは政権交代によってあまり⽣かされることがありませんでした。遺伝⼦組換え作物については、北海道庁と北⼤が共同で、デンマークで開発された「コンセンサス会議」という⼿法を利⽤して道⺠の意⾒を聴取しており、条例制定に結びつけています。⽇本では今の所これがもっとも明らかな「参加型⼿法」の成功例と⾔えます。
選挙期間中になってしまえば、候補者の⼈となりや哲学を知るための「講演会」は重要ですが、それ以外の期間については、政党と市⺠との関係という意味でも、もっと積極的にむしろ市⺠側から意⾒を突きつけていくような集会が必要だと思われます。というのも、例えば業界団体などは⽇々そうしたことをやっているわけです。しかし、それらはそういった業界の利害を(程度の差はあれ)代表するものであり、社会全体のための(ルソーのいう⼀般意志としての)政策を提⾔するものではありません。しかし、利害関係の多様な市⺠が集まり、そこで熟議して懸念や希望を集約していくような集会は、より多様性と公共性に開かれた結論に⾄ることが期待できます。
そうした実験を、政党の協⼒を得ながら、市⺠⾃⾝の⼿で作り上げていくことは重要であるように思われます。
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