2012年12月28日金曜日

フランス緑の党 全国書記パスカル・デュラン氏のお話(1)

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 以下、フランス「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」(以下、緑の党)の事務局長(全国書記、代表に相当)のパスカル・デュラン氏のお話。音声を取っていたわけでもなく、写真撮ったり質問したりしながらだったので、手元のメモを利用して再現しているので、順番などは正確ではありません。自分の聞きたかったところだけピックアップしている側面も…。まぁ、参考まで、ぐらいで…。



From Wikipedia
デュラン: 選挙に関しては、連立型でいくか、緑の党単独で行くか、という選択肢がある。これは困難な選択で、独立型は独自政策を貫けるが、フランスが小選挙区制であり、小規模政党単独での当選は通常極めて困難である。一方で、連立に関しては、当然不本意な政策を受け入れざるを得ず、党内外からの批判を受けることになる。これまでも、社会党との連立に関しては、重要なパートナーであるジョゼ・ボヴェヴィア・カンペシーナのようなアルテルモンディアリスム系の団体からは「リベラル」という批判を受けてきた(筆者注:マクドナルド襲撃で有名な活動家ジョゼ・ボヴェの活動母体はフランス農民連盟という団体であり、同団体はヴィア・カンペシーナという世界的な小規模農家の団体に加盟している)。
 またフランスが強力な中央集権国家である以上、国政に進出しなければ実質的な政策には関与できない。2007年のフランス総選挙では緑の党は独自路線を貫こうとして失敗したという側面がある。そこで、2009年の欧州議会選挙ではダニエル・コーン=ベンディットと私(パスカル・デュラン)が中心となって、なるべく広い勢力が参加できるような枠組みを提案して「ヨーロッパ・エコロジー=緑の党」として挑んだ。欧州議会選挙は各国毎の比例制という、比較的緑の党に有利な選挙形態であることもあり、これは満足のいく議席数を確保できたと思う。
 いずれにしても、フランス国内では議席を得るためには連立は欠かせない。また党執行部や国会議員は連立路線を望んでいる。ただし、緑の党の一般的な支持者で連立を望むものは多くはないと見られている。例えば支持者の間には「左派と連立を組むことが多いが、私は左派ではない」という主張や、「連立を組むことによって魂を失ってしまう」という主張が見られる(なお、ある調査によれば緑の党の支持者層のうち、4割程度が自分を左派であると認識しており、1割程度が保守であると認識している)。このねじれは非常に重大な問題である。
 また、緑の党の多くはバカロレア後5年以上の教育を受けた層(Bac + 5)である(筆者注:日本では修士以上、ないし医師や弁護士層に相当するであろう)。農村や都市周縁部、労働者階級に支持されていないというのは緑の党にとって重要な課題である(筆者注:アメリカだと都市周縁部/郊外は富裕層が住むというイメージだが、フランスではゲットー化している地域というイメージがある)。これは、緑の党の政策が短期的にはフランス国内で800万人といわれる貧困層の状況改善や、欧州全土で2500万人と言われる失業についてなんら寄与しない、すなわち経済的メリットがないと見なされていると言うことである。経済、雇用創出にエコロジーが寄与するということを労働者層に説得できていないのである。いっぽう、緑の党の主要な支持層である Bac + 5 は、短期的な経済政策よりも長期的な地球環境の持続可能性といった問題を重視する傾向はある。
 そこで、我々は現実を直視する必要がある。有権者の大多数はエコロジストではなく、我々は少数派である、ということである。なので、社会党との合意点を見つけて、連立を組むという意外の選択肢は現実的とは言えない。これは倫理的な戦略である。こうしてできた連立政権による政策は、もちろんエコロジーな法律とは言い難いが、一方でエコロジーな方向に影響を及ぼしていくことはできる、ということである。具体的には原子力の比率を下げ、有機農法への支援を盛り込み、飛行機よりも鉄道を優先する、といったことである。具体的な連立は政党間の協定となり、個別の選挙区毎に協定先を変えるということはない。

 2007年の大統領選で、環境に関するテレビ番組のプロデューサー兼レポーターとして有名なニコラ・ユロが「エコロジー協定」というプロジェクトを行った。これは、大統領選の候補者に環境に関する10項目からなる協定書に署名し、当選後はそれを履行するように迫るものであった。75万人の有権者がこれに賛同し、有力な候補者たちが署名を拒んだ場合はユロ自身が大統領選に出馬するという声明も出された。結果的には、この選挙で大統領に当選するニコラ・サルコジを含めて主要な候補者のほとんどがユロの協定に署名した。しかし、当時の緑の党はこの協定というアイディアそれ自体に反対した。つまり、環境とは基本政策を変えずに断片的な賛同によって達成できるようなものではない、という主張である。しかし、この主張は有権者の非難を招き、緑の党の党勢退潮という結果を招いた。
 そこで、2009年の欧州議会選挙はダニエル・コーン=ベンディットや私(パスカル・デュモン)が「緑の党に依拠しない、結束のための枠組み」ということで、ヨーロッパ・エコロジーという枠組みで選挙態勢を組み、結果的には緑の党もこれに合流する形で幅広い社会運動の連帯が可能になった。設立時点ではセシル・デュフロが執行部の第一位に選出され、代表(事務局長)に就任したが、デュフロが地域間平等・住宅大臣に転出したため、第二位であった私(デュモン)が昇格した(緑の党は原則として兼職を嫌うため、党執行部と大臣、国会議員等は兼職しない)。現在までの所、フランス緑の党は北欧、ドイツ型の「男女一名の共同代表制」はしいていない。私はそうするべきだと思うが、党内の合意は取れていない。

 (このあと、フランス緑の党の組織構造の話が入りますが、そこは別の記事で)

 2014年に選挙があるので、来年臨時の代議員総会を行う。選挙がなければ総会は4年おき。この総会には全国約1万人の緑の党党員から選出された1000人が参加し、15人の執行部を選出するなどの決定を行う。今回から、選挙だけでなく、20名は完全にランダム(選ばれたい党員は名簿に登録し、そのなかからくじ引きで20人を選ぶ)という方式も採用することにした。ただし、この1000人は執行部を選ぶためのもので、原則として代議員総会後は解散と言うことになる。また、代議員はクォータ制を採用しているので、人数比率は男女1:1にならなければいけない。
 選挙と言うことでは、Bac+5以外の人々にどう支持を広げるかが課題であり、経済と環境の問題をどうアピールするかが重要である。

【質問】環境重視と言っても、環境ベンチャー等で経済を活性化していく、言わばデンマーク化するという方向性と、脱成長(decroissance)を追究すべきだという路線がありうるが、緑の党としてはどちらを重視していくのか?

デュラン:それに答えるには、まず自分たちが何故選挙をやるのか、ということを自問する必要がある。民衆の啓発のためなのか、現実の政治に力を及ぼしていくということなのか? 後者だとすれば、我々は有権者の前で「デクロ」というべきではないということだ。
 一方で、フランスにおいて現実に環境ベンチャー等の経済規模が大きくなるという見込みは大きくない。エネルギーの比重は著しく原子力に偏っており、資金も原子力に集中している。リサイクル産業なども、ほぼ全ての製品が実際の製造過程を中国などにアウトソースしている状態で、あまり大きな経済規模は期待できない。雇用創出のための環境主義、という期待はフランスでは難しい面があると思う。
 なので、我々は現実的になり、他党と幅広く連携し、既存の政策を環境に配慮したものにしていくように修正していくということから始めなければ行けない。なので、我々は相手よりも有能になる努力をしなければ行けない。有権者に強い「雇用主は悪い人で、労働者はいい人」、「産業界はすべて悪い」といったイメージに依拠するのではない活動を行わなければならない。

【質問】では、日本では原発事故と中国脅威論が同時に起こっている結果「環境主義的な極右」という立場もありうるわけだが、国民戦線が環境に配慮するといった場合、連立などの形はあり得るのか?

デュラン:我々は「連帯と人権」を前提に活動を構築してきており、その大前提を共有していない極右との連携は絶対にあり得ない。また、極右の側がそういう選択をする可能性もフランスではほぼないだろう。もちろん、指摘されるとおり近年極右が我々の政策を取り入れる、ということは見られる。双方が支持する政策は、例を挙げれば国際貿易に関する保護主義のようなものである。しかし、彼らが例えば「中国」といった属性を問題にするのに対して、我々は消費地までの回路(資源の移動距離)や、生産体制における環境や人権の問題といったことを総合的に評価して、適切な規制を行うべきだ、という立場であり、結果的に似通っていても哲学的前提はまったく違うものである。このことはお互いに了解していると思う。

※以下、できれば組織についてのほうもエントリーに…(→後半公開しました
 あと、ずいぶん前に書いたスウェーデン緑の党ペール・ガットン氏のお話もご覧ください。
 ・スウェーデン緑の党Per Gahrtonさんと語る会(2006年7月9日)報告

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