帰国してしばらくたちますが、なかなかご報告が進んでおらず申し訳ありません。
とりあえず、「AAAS2017(ボストン) 2月16日 (前半)」の続き、初日後半についてのご報告です。
AAASの年会は週末を通して行われるが、その間、四回の「全体講演」が行われる(一番大きい会場で行われ、その間は他の会議は行われない、という程度の意味である)。
初日の全体講演はAAAS会長のバーバラ・シャール教授(ワシントン大学セントルイス校アート・アンド・サイエンス学部長)によるもの。
トランプ氏の言動に当てつけたわけではないだろうが、司会(AAAS前会長ジェラルディン・リッチモンド氏)、紹介講演(ブラウン大学学長クリスティナ・パクソン氏)、そして今回から会長に就任するシャール氏の主要登壇者三名とも女性である。
リッチモンド氏からは、AAASが出している中東7カ国からの入国を制限する大統領令への批判など、トランプ政権が国際的な文化交流や学問の自由と進歩を阻害するような政策を打ち出していることへの批判があった。
特に、(学術出版大手の)エルゼビア社による、第三世界諸国のキャリア初期女性研究者を懸賞する賞では、バングラデシュなどの5人の研究者が受賞したが、このうちスーダン科学技術大学のラニア・モクタル氏がトランプ大統領による中東・アフリカ七カ国からの入国禁止令によってアメリカに入国できなかったことが告げられた。
また、これの大統領令に対してAAASが「科学の進歩は公開性、透明性、アイディアの自由なやり取りに依存している。そしてアメリカはこれらの原則によって国際的な科学的才能を引きつけ、またそこから利益を得てきた」として抗議声明を出したことにも言及された。
また、そういった中でAAASの会員はかつてない急増を見せており、今年に入って9000人が加入したこともアナウンスされた。
バーバラ・シャール会長の公演もこういった原則を確認し、またトランプ政権の方向性に対して強い態度で望むものであった。
シャール氏は、まず、STEM(科学・技術・工学・数学)領域が産業や雇用に資するものであり、それを持って人々の生活の質を向上させるものであることを強調した。
これは、今回の大会テーマである「公共財(/善)としての科学」ということであるわけだが、テーマを決めた段階ではまさかこれほど切実な問題になるとは彼らも思っていなかったのではないだろうか?
講演の中で、STEM関連の雇用は、アメリカ全体でも、今回の選挙で争点になった重工業が強い五大湖周辺州(いわゆる「ラスト・ベルト」)でも(時期と場所により若干の例外はあるが)伸びていることも示された。
その上で、基礎研究が人類の発展を支えているが、基礎研究が製品などの形で社会に役にたつあり方は単純ではなく、どういった研究が将来社会的・経済的メリットをもたらすかは予測し難いので、自由な研究で幅広い基礎研究が行われることが大事だと述べた。
例としては、アインシュタインが相対性理論を発表した時点では、それがどのように役にたつかはアインシュタイン自身すらも全く予測できなかったであろうが、現在それはGPS技術を使って高い精度で位置を確認するのに必須になっている、といった例が示された。
また、環境、健康、そしてグローバルな飢餓や栄養不良の問題の解消に科学が貢献しており、また今後とも科学的な発展が必要である、ということも強調された。
現在、この領域で必須の技術の一つであるPCRに関しても、発見のきっかけはイエローストーン国立公園の高温の温泉で、なぜ生存可能な微生物がいるのだろうか、という基礎研究的な好奇心から出発したということも言及された。
ただ、シャール氏の述べるようなことが「トランプを支持する」層(と言ってもおそらく一枚岩ではないわけだが)に届くか、というと疑問な点も多々あるわけである。
この辺りは、追って議論して行きたい。
とりあえず、「AAAS2017(ボストン) 2月16日 (前半)」の続き、初日後半についてのご報告です。
AAASの年会は週末を通して行われるが、その間、四回の「全体講演」が行われる(一番大きい会場で行われ、その間は他の会議は行われない、という程度の意味である)。
初日の全体講演はAAAS会長のバーバラ・シャール教授(ワシントン大学セントルイス校アート・アンド・サイエンス学部長)によるもの。
トランプ氏の言動に当てつけたわけではないだろうが、司会(AAAS前会長ジェラルディン・リッチモンド氏)、紹介講演(ブラウン大学学長クリスティナ・パクソン氏)、そして今回から会長に就任するシャール氏の主要登壇者三名とも女性である。
リッチモンド氏からは、AAASが出している中東7カ国からの入国を制限する大統領令への批判など、トランプ政権が国際的な文化交流や学問の自由と進歩を阻害するような政策を打ち出していることへの批判があった。
特に、(学術出版大手の)エルゼビア社による、第三世界諸国のキャリア初期女性研究者を懸賞する賞では、バングラデシュなどの5人の研究者が受賞したが、このうちスーダン科学技術大学のラニア・モクタル氏がトランプ大統領による中東・アフリカ七カ国からの入国禁止令によってアメリカに入国できなかったことが告げられた。
また、これの大統領令に対してAAASが「科学の進歩は公開性、透明性、アイディアの自由なやり取りに依存している。そしてアメリカはこれらの原則によって国際的な科学的才能を引きつけ、またそこから利益を得てきた」として抗議声明を出したことにも言及された。
また、そういった中でAAASの会員はかつてない急増を見せており、今年に入って9000人が加入したこともアナウンスされた。
バーバラ・シャール会長の公演もこういった原則を確認し、またトランプ政権の方向性に対して強い態度で望むものであった。
シャール氏は、まず、STEM(科学・技術・工学・数学)領域が産業や雇用に資するものであり、それを持って人々の生活の質を向上させるものであることを強調した。
これは、今回の大会テーマである「公共財(/善)としての科学」ということであるわけだが、テーマを決めた段階ではまさかこれほど切実な問題になるとは彼らも思っていなかったのではないだろうか?
講演の中で、STEM関連の雇用は、アメリカ全体でも、今回の選挙で争点になった重工業が強い五大湖周辺州(いわゆる「ラスト・ベルト」)でも(時期と場所により若干の例外はあるが)伸びていることも示された。
その上で、基礎研究が人類の発展を支えているが、基礎研究が製品などの形で社会に役にたつあり方は単純ではなく、どういった研究が将来社会的・経済的メリットをもたらすかは予測し難いので、自由な研究で幅広い基礎研究が行われることが大事だと述べた。
例としては、アインシュタインが相対性理論を発表した時点では、それがどのように役にたつかはアインシュタイン自身すらも全く予測できなかったであろうが、現在それはGPS技術を使って高い精度で位置を確認するのに必須になっている、といった例が示された。
また、環境、健康、そしてグローバルな飢餓や栄養不良の問題の解消に科学が貢献しており、また今後とも科学的な発展が必要である、ということも強調された。
現在、この領域で必須の技術の一つであるPCRに関しても、発見のきっかけはイエローストーン国立公園の高温の温泉で、なぜ生存可能な微生物がいるのだろうか、という基礎研究的な好奇心から出発したということも言及された。
ただ、シャール氏の述べるようなことが「トランプを支持する」層(と言ってもおそらく一枚岩ではないわけだが)に届くか、というと疑問な点も多々あるわけである。
この辺りは、追って議論して行きたい。