トリックル・ダウンというのは「富裕層が経済的に成功すると、その果実が貧困層にも波及し、結果的には社会全体が豊かになる」という論理である。オバマ政権はリーマン・ショック後、アメリカの経済を立て直すことには成功したが、その果実は貧困層には波及しなかった、と非難されることがあり、これが今回、貧困層(特に「ラスト・ベルト」などと呼ばれる、工業化された五大湖周辺州で長く重工業などに従事してきて、伝統的には組合の支持する民主党を支持してきた労働者階層)の一部がトランプに賭けたことが、ヒラリー・クリントンの敗北を招いたと言われている。しかし、トランプが「トリックル・ダウン」させるのは経済的果実ではなく、憎悪である、という議論がある。同じ共和党の重鎮で、2012年には共和党の大統領候補でもあったミット・ロムニーも「憎悪のトリクルダウン」という言葉でトランプを批判している(ただし、選挙終了後ロムニーとトランプは急接近し、国務長官を務めることも噂されている。元々ロムニーはマサチューセッツ州知事時代は中道よりの共和党員として知られ、中絶の権利などにも寛容であったが、大統領選に出馬後は宗教保守派の支持を取り付けるために主張を右傾化したことでも知られ、「定見のない政治家」という評判がある)。