ちょっとしたメモ代わりエントリー。
2006年に韓国でPCST(科学技術に関する公衆コミュニケーション)という学術会議が開かれました。
それの関連イベントと言うことで、日本で行われたシンポジウムの議事録から欧州委員会研究総局広報担当官の方のコメントをご紹介(残念ながら講演録は存在してるものの、ネット上にないので…)。
NGOの「アジェンダ設定機能」を(大学に所属する社会学者ではなく)官僚機構の側の人間が必要だと認識しているというのが非常に印象的で、鳩山政権が「新しい公共」と言い始めた時は(だいたい日本の議論は10年遅れぐらいで推移しているので)日本でも10年後にはこうなるかと予測し、ある程度期待もしていたのですが、どうもそうはならなそうなのが残念、ということで…。
パトリック・ヴィッテ・フィリップ氏(欧州委員会研究総局広報担当官)
私からも一言付け加えさせて頂きたいのは、NGO(非政府団体)の役割です。ヨーロッパでは、これは色んな意味で大変重要です。ホリマンさんは私に賛成し てくれると思いますが、彼らはアジェンダ(議論されるべき議題)を設定します。それも、あっといわせるようなやり方で設定するのです。例えばグリーンピースという団体は、最近もそういうことがありましたが、これまで会議やいろいろなイベントを乗っ取ってきたのです。彼らも重要であり、またNGOも、学協会も、行政の諮問委員会も、選ばれた議員たちも、そのすべてが決定プロセスの一部を構成するのであり、私たちはそのことを受け入れるべきです。もしそのうちのどれかが欠けているとすると、たとえばNGOということですと、ロシアではNGOはいまや存在していませんが、そうすると、何か恐ろしいことが起こりうるわけです。もし選出された議員たちがいなければ、大学教授が専制をふるうことになってしまいます。私たちはそのいずれも望んではいません。メディアしか なければ、メディアの専制となってしまいます。ですから、必要なのはバランスなのです。
於サイエンスコミュニケーション国際シンポジウム「科学を語り合う」
2005年5月23日日本大学カザルスホール
…で、NGOのないロシアでは「 何か恐ろしいことが起こりうる」と述べて、これは基本的には国家による直接的な言論弾圧の可能性を示唆しているわけですが、たぶん日本ではNGOはそれなりにあるものの、欧州におけるようなアジェンダ設定機能を果たせているかと言うことは極めて疑わしく(これはNGO側の責任、政府の責任、またNGOに知的リソースをうまく提供できていない大学等の責任、等々色々あるわけですが)、そうするとたぶんロシアでそうなのとはちょっと違った、もうちょっとソフトな「何か恐ろしいこと」が起こっているのではないか、ということに我々は注意を向けるべきでしょう。
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