2015年12月27日日曜日

遺伝子情報を利用した医療サービスの議論に、生権力に関する議論が欠けていることを憂慮する

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厚労省の「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」で、進展するゲノム関連の医療技術に関する「規制」が議論されているが、ここではゲノム情報を「個人情報」として、個人情報保護法の範疇で議論することを求めるとされたようである。これに冠しては例えば「難病治療研究の妨げにも」という報道もあるが、逆に「個人情報として扱うだけでは、規制として不十分なのではないか」という議論もしておく必要がある。何方かと言えば、個人情報保護法とは別の枠組みで、ゲノム情報の取得と管理に関するルールが定められるべきであろう。というのも、ゲノム情報は、個人の情報というだけではなく、その親族の情報を部分的にせよ含んでいる。たとえばAさんがポリシーとしてゲノム情報を秘匿しておきたいと考えたとしても、家族数人のゲノム情報がとれれば、Aさんのゲノム情報はかなりの程度推察できる、という問題がある。もちろん、ゲノム情報が医療などでの有用性を持つことを考えれば、「Aさんの親族全員の同意をとるまでAさんの遺伝子検査をしてはならない」などということは非現実的である。一方で、なんらかの落としどころとして、Aさんの親族関係情報と、ゲノム情報が結合して処理されないようなストッパーは必要であろう。この点は、現在の個人情報保護法で十分とは言いがたいであろう。

また、「ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース」が、差別、排除の問題しか検討していないように見えることも懸念される。これは、例えば「遺伝子解析を「差別」につなげない仕組みづくりとは」という、遺伝子診断を実際におこなっているジーンクエスト社の高橋祥子社長へのインタビュー記事でも同様である。

2015年12月24日木曜日

大学入試新テストはOECD-PISAテストがモデルか?

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大学入試センター試験に代わって記述式の問題などを取り入れた「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)が検討されているが、その試験問題などが朝日新聞(記事「考えるプロセス問う 大学入試新テスト問題例」)などで報道されていた。問題の全文は、文科省高大接続システム改革会議(第九回)の配布資料で示されたもののようである。記述式試験というと、フランスのバカロレアなどが有名である。グローバル化が主張されている中、そういう方向性化と思っていたが、問題文を見るとPISA試験との類似性が見て取れる。参考資料などとあわせてみると、PISAをモデルのひとつにしていることは明らかなように思われる。

2015年12月20日日曜日

「がんばる人を評価する政府」は極右ないし全体主義政府です

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民主党の玉木雄一郎氏(香川2区)が次のような発言をしていました。

それに対して、批判が殺到すると、

さて、この議論は大きな問題を孕んでいると考えますが、それについて説明します。

2015年12月18日金曜日

夫婦(選択的)別姓問題 …そこで「くじ引き」ですよ。

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夫婦同姓規定に関する最高裁判決が出て、「とりあえず同姓にすることを強制する法律は違憲とまでは言いがたい」という結論のようです。
 その余波で、以前の Tweet

が沢山 Retweet されています。

2015年12月11日金曜日

良いベーシックインカムと悪いベーシックインカム

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フィンランド政府がベーシック・インカム導入、というニュースが話題になった。結果的には、即導入というものではなく、導入を検討中、というニュースであったため、騒ぎは沈静化の方向だが、先進国のひとつが現実的な選択肢として捉えているというのは、大きなニュースであるとは言える。
さて、ベーシック・インカムとは、全国民に固定で(最低限生活できる程度の)現金を給付するというものである。フィンランドのケースでは、800ユーロ(約11万円)の支給が想定されているという。未成年にも配るかといった方法の違いはあるが、基本的に個人単位で配るため、数人で世帯を形成すれば生活費は確保できる。つまるところ、「働かなくても(最低限)暮らしていける」社会がやってくるのである。さて、これはいいことだろうか?

2015年12月8日火曜日

軍事研究を大学が受けることの問題について

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第二次世界大戦後、長く日本の大学は軍事研究に参加しないという方針を共有して来た。近年、政府の方針転換や大学の予算不足と言った様々な方針により、徐々に解禁の方向に動いている。これには当然ながら反対運動もあり(私はこの反対という立場に賛同するものである)、様々な議論が行われている。また、議論が行われている中でも、実際に軍事研究費の受け入れは行われており、12月7日付けでも東京新聞が「日本の研究者に米軍資金 12大学・機関に2億円超」と報じているが、この記事の中に多少気になる表現が見られる。