2017年3月2日木曜日

トランプ政権に抗議する野外集会"Stand Up For Science"

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 19日(土)の午後、AAASからは独立しているものの、併催するという形で、トランプ政権に抗議する野外集会"Stand Up For Science" ラリーが開かれた。
 これに参加するため、千人を超える人々が、思い思いのプラカードを掲げて、AAAS会場近くのコプリー広場に集まってきており、この情景は日本も含めたアメリカ内外で広く報道されたようである。
 当初の案内では短距離ながらデモも行われるのだと思っていたが、この時は10人ほどがスピーチする野外集会だけで終了した。

 基本的な視点は、科学者が真実と(AAASのテーマでもある)公共善のために立ち上がるべきだ、というものである。
 主催団体は、主に気候変動に関わる社会運動である climatetruth.org (これはAAASの全体講演でも講演し、またこの時もスピーチを行ったナオミ・オレスケスも顧問に名を連ねているNPOである)と、カナダの著名な社会運動家(日本でも『ブランドなんか、いらない』や『ショック・ドクトリン』などの著作で知られる)ナオミ・クラインが顧問を務める thenaturalhistorymuseum.org であり、この他に「憂慮する科学者同盟」やグリーンピース、地域の環境問題などを扱う学生団体が呼びかけている。

2017年3月1日水曜日

ナオミ・オレスケス講演「科学者は衛視の役割を努めるべきか?」 (AAAS年次総会 2日目全体講演)

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AAAS年次総会(2007)、二日目の全体講演は科学史研究者のナオミ・オレスケスによる「科学者は衛視の役割を努めるべきか?」 Should Scientists Serve as Sentinels? 。


 オレスケスはハーバード大学の科学史、および地球・惑星科学の教授である。
 「気候変動は嘘だ」や「タバコの健康被害はない」と言った「学説」がどのような科学者たちによって繰り返されているかと言ったことを論じた『世界を騙しつづける科学者たち』()という本を出版しているが、AAASでの講演もそれをなぞる話であった。


科学者の二つのあり方として「科学的に言えることしか言わない」という人と、気候学者のジム・ヘンソンのように逮捕されることも厭わず社会的価値を訴える科学者がいる、とオレスケスは述べる。
 オレスケスによれば、ヘンソンまで行かなくても、その中間形態として「責任ある科学者」モデルが必要である。
 少なくとも「科学的なことだけ言っていればいい」わけではない。なぜなら、そう言った科学者はしばしば「事実をして自らを語らしめる」と言いたがるが、実際は、事実が自らを語ることは期待できないからである。
 温暖化否定論やタバコの害はない、と言った議論に実績ある科学者がコミットするのはなぜだろうか?
 一つには産業界からの金、ということがあるが、それだけでは十分な説明ではない。むしろ彼らは自らの価値観のために事実を捻じ曲げている。



一般に、これら否定論者は政府の規制が増大することを嫌うリバータリアンである。
 この思想は通常ハイエクに起源を求められるが、レーガンがそれを都合よく利用した。
 否定論者の多くはこのレーガン人脈にいるのであり、彼らの目的は規制を緩和し、企業活動の自由度を上げることであり、そのために環境や健康規制の根拠となる研究に否定的な態度を示すわけである。

結論として
「我々の反対者は価値に動機付けられており、その価値は独立独歩であることを尚び、福祉的な問題であっても中央政府の介入を嫌うアメリカの草の根に広がる価値観と共鳴している。
 なので、我々(科学者)も価値を語らなければいけない」
 のである、とオレスケスは述べる。

その(科学の)価値とはフェアネスやアカウンタンビリティ、現実主義、創造性、と言ったことで、これらが「市場」の価値に対抗できるのだ、というのがオレスケスの結論。
 お行儀のよいAAASの講演では珍しく、多くの人がスタンディング・オヴェーションで講演を讃えていた。

AAAS2017(ボストン) 2月16日 (後半)

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帰国してしばらくたちますが、なかなかご報告が進んでおらず申し訳ありません。
とりあえず、「AAAS2017(ボストン) 2月16日 (前半)」の続き、初日後半についてのご報告です。


AAASの年会は週末を通して行われるが、その間、四回の「全体講演」が行われる(一番大きい会場で行われ、その間は他の会議は行われない、という程度の意味である)。
 初日の全体講演はAAAS会長のバーバラ・シャール教授(ワシントン大学セントルイス校アート・アンド・サイエンス学部長)によるもの。
 トランプ氏の言動に当てつけたわけではないだろうが、司会(AAAS前会長ジェラルディン・リッチモンド氏)、紹介講演(ブラウン大学学長クリスティナ・パクソン氏)、そして今回から会長に就任するシャール氏の主要登壇者三名とも女性である。

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 リッチモンド氏からは、AAASが出している中東7カ国からの入国を制限する大統領令への批判など、トランプ政権が国際的な文化交流や学問の自由と進歩を阻害するような政策を打ち出していることへの批判があった。
 特に、(学術出版大手の)エルゼビア社による、第三世界諸国のキャリア初期女性研究者を懸賞する賞では、バングラデシュなどの5人の研究者が受賞したが、このうちスーダン科学技術大学のラニア・モクタル氏がトランプ大統領による中東・アフリカ七カ国からの入国禁止令によってアメリカに入国できなかったことが告げられた。
 また、これの大統領令に対してAAASが「科学の進歩は公開性、透明性、アイディアの自由なやり取りに依存している。そしてアメリカはこれらの原則によって国際的な科学的才能を引きつけ、またそこから利益を得てきた」として抗議声明を出したことにも言及された。
 また、そういった中でAAASの会員はかつてない急増を見せており、今年に入って9000人が加入したこともアナウンスされた。